「平成」の次の元号が「令和(れいわ)」に決まった。皇太子さまが新天皇に即位される5月1日午前零時に改元する。国民の受け止め方はおおむね好意的だ。これまでのように中国の古典からではなく、日本最古の歌集「万葉集」から採ったことも親しみが持てる。
天皇の退位に伴う改元は憲政史上初めてという。即位前に新元号を決め、公表したのもまた初めてだ。
ちなみに、新元号の候補は令和のほか、「英弘(えいこう)」「久化(きゅうか)」「広至(こうし)」「万和(ばんな)」「万保(ばんぽう)」の五つがあったとされる。結局、令和が採用されたが、あなたはどれを推しますか?
平成は昭和天皇の逝去に伴う、世の中が自粛ムードにある中で発表された。「新しい時代の幕開け」という高揚感はなかったような記憶がある。
今回は天皇皇后両陛下がご健在の中での代替わりであり、当時とは背景が異なる。新緑の季節の中、さわやかな心持ちで新時代を迎えたいものだ。
社会の変化のスピードは速く、改元ブームはそう長くは続かないだろうが、ビジネスチャンスであることに変わりはない。改元にちなんだ新たな商品やサービスがこれから続々と出てきそうで、観光業界も指をくわえているわけにはいかない。5月1日に始まる“令和商戦”では確かな手ごたえをつかもう。
一躍スポットが当たったのが福岡県の太宰府だ。令和は約1300年前の太宰府であった「梅花の宴」がうたわれた万葉集の序文が由来とされている。太宰府天満宮や大宰府政庁跡などが改めて注目されそうで、「新天皇陛下にも足を運んでいただけたら」との声も上がる。
大手旅行業者も記念プランを相次ぎ企画、発売し始めた。天皇皇后両陛下のお召し列車として扱われたこともある「サロンカーなにわ」に4月30日に乗り、車中で改元の瞬間を迎えるといったツアーなどがある。
平成時代の30年は、天皇陛下が振り返られたように、近・現代において初めて戦争を経験しない時代だった。それだけでも特筆に値するが、バブル崩壊後の経済の停滞が長く続き、阪神淡路大震災、東日本大震災など天災も相次ぎ起こった。
一方で、観光庁が発足し、政府も「観光立国」へ大きくかじを切った。業界の実力が正当な評価を得ているとはいえないが、平成は観光に注目が集まったエポックメイキングな時代だったことは間違いない。
令和は業界にとってどんな時代になるのだろう。「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味もあるようだ。観光の力で令和を明るくしたい。
新元号「令和」を発表する菅官房長官(4月1日、首相官邸ホームページから)